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小説新潮
万城目 学
新潮社
¥ 1,404
(2014-07-22)

隔月でSFファンタジーの新刊を紹介している「小説新潮」。
今回取り上げたのは『悟浄出立』と『就職相談員蛇足軒の生活と意見』。

以下原稿より引用。

 万城目学の『悟浄出立』(新潮社)は、中国の古典から題材をとった短編集だ。表題作は『西遊記』の三蔵法師一行のなかでいつも最後尾を歩く沙悟浄が主人公。冷静に状況を分析し、危険を事前に見抜くが、何も行動せず、何も発言しない。自分のことも他人事のようにしか感じられない悟浄は〈ああ、いったい、俺はどこまで観察者であり続けるのか〉と嘆く。彼が仲間の意外な一面を知って、世界の見方を変えるラストシーンは胸にしみる。着想のきっかけになったという中島敦の「悟浄出世」「悟浄歎異」も読みたくなる。

このあと「悟浄出世」と「悟浄歎異」読みました。家にあった…。
万城目さん新機軸でもあるけど『とっぴんぱらりの風太郎』と通じる部分もある。

松崎有理の『就職相談員蛇足軒の生活と意見』(KADOKAWA)も、「いま・ここ」と異なる世界を舞台に切実な感情を描いた一冊。主人公のシーノは、二十七歳の研究員だ。といっても無給で、就職が決まらないまま、ついに大学を出ざるを得なくなってしまう。持っている資格は博士号だけ、専門はホラホラ属というきわめて珍しい生物の分類と記載、しかも女で訥弁。ようやく見つけた仕事は、嘘術の家元を名乗る蛇足軒という男の秘書だった。彼は職安特命相談員もつとめていて、難ありの求職者に適職を紹介するが……。

「蛇足軒」はお菓子がすっごくおいしそうで、金魚のいちゃぽん(と最後のほうの話に出てくるロボット掃除機)が超かわいいです。ぜひ。
| お知らせ | 15:03 | - | - |
乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺
今週の「週刊金曜日」に『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』(ラティフェ・テキン著、宮下遼訳、河出書房新社)の書評を書いています。

以下、原稿より引用。

本書に特定の主人公はいない。ある冬の晩、都市のゴミが集まる丘に造られた、一夜建ての街が物語の主役だ。一夜建てとは、農村からの不法移住者が国有地などに建てる家屋。夜陰に乗じて建てることからそう呼ばれているらしい。屋根はプラスチック製の器、扉は古びたキリム、窓ガラスは防水布、壁は生乾きのレンガ。強風が吹けば屋根板と一緒に赤ん坊が飛ばされてしまうほど粗末な小屋だ。不法建築だから朝になると解体業者に打ち壊されてしまうが、住人たちは周囲のゴミを材料にして、何度も何度も家を建てなおす。ひと月以上の戦いを経て解体業者は去り、そこは〈花の丘〉と名づけられる。生きもののように成長し衰えていく街のありようが語られていく。

トルコ文学ってオルハン・パムクくらいしか読んだことありませんでしたが、まだまだおもしろい小説があるんだなあと思いました。ぜひ。
| お知らせ | 18:08 | - | - |
北の大地を読み尽くせ!
今月の「小説すばる」は「読んで旅する北海道」特集。
座談会、エッセイ、ルポ、まんがエッセイなど、人気作家がいろんな角度から北海道の魅力を語っています。

わたしは「北の大地を読み尽くせ!」というブックガイドを書かせていただきました。
映画も話題になった直木賞受賞作から、注目の新鋭の歌集まで。
作中からいいなあと思った部分を引用しつつ、紹介しています。

書いていてすっごく楽しくて、北海道に行きたくなったので、もしよかったら読んでみてください。

目次↓

| お知らせ | 17:26 | - | - |
ドリームナビ
「ドリームナビ」のブックレビュー連載、今月は『「ニセ医学」に騙されないために』と『背信の科学者たち』をとりあげています。

2冊とも読んでいて思ったのは、人はほんとうに自分の見たいものしか見ないんだなあということです。わたしの視点にも歪みはあると思うけれども、それで周囲の人の命を危険にさらしたり、過剰な報道に翻弄されたりしないように、判断基準は持っておきたいなと。過去の事例を知ることは役に立ちます。
| お知らせ | 15:20 | - | - |
殺人出産
村田 沙耶香
講談社
¥ 1,512
(2014-07-16)

 「日経ウーマン」9月号で村田沙耶香さんにお話を伺ってます。
『殺人出産』(講談社)について。

10人産んだら1人殺してもいい世界を描き既成概念をゆさぶる表題作は
もちろんおもしろいのですが、「清潔な結婚」というすっごく笑える
一編も入っているのでぜひ。

「殺人出産」を書くきっかけになった「生命式」という
短編も読んでみたいと思いました。
人肉をカシューナッツで炒めるらしい!

現実で殺人が起こるのは嫌だけど(村田さんもそうおっしゃっていた)
小説では何を考えてもいい。想像のリミットを外す感じが楽しいです。
| お知らせ | 20:01 | - | - |
銀翼のイカロス
池井戸 潤
ダイヤモンド社
¥ 1,620
(2014-08-01)

 「週刊文春」8月14日、21日夏の特大号にて、池井戸潤さんとTBSの福澤克雄さん(ドラマ「半沢直樹」演出)の対談構成を担当しました。新作『銀翼のイカロス』の背景からシリーズの今後まで。

クリエイターとして共通点のあるおふたりのトーク。小説ファンにもドラマファンにも楽しんでいただける記事になったと思います。ぜひご一読を。
| お知らせ | 06:39 | - | - |
大いなる不満
『大いなる不満』の書評を「すばる」9月号に寄せています。
以下、原稿より引用。

スーパー3D顕微鏡を使って撮影された微生物の写真を見たことがある。高精細で立体的な画像は、あらゆる生き物の造形のヘンテコな部分を際立たせる。クマムシはとぼけた顔をした宇宙飛行士のようだし、カイコガの幼虫は剛毛が生えた子泣きじじいみたいだ。グロテスクだけれど、どこか愛らしい。『大いなる不満』は、コンパクトサイズに凝縮した人間の営みを、スーパー3D顕微鏡で覗いてみたような読み心地が味わえる。一九八三年生まれのアメリカの作家、セス・フリードのデビュー作を含む短編集だ。エデンの園で暮らしながら満たされない欲望を抱え混乱する動物たちを描いた表題作ほか十編を収める。

最後に収められている「微小生物集」の「ハリファイト」のくだりがかなり好きです。
読みながら、作家の役割のひとつって、人間の営みをぎゅっと凝縮して、ふだんは見えない部分を拡大することなのかも、と思ったりしました。

「すばる」特集もおもしろそうですので、ぜひ。
| お知らせ | 23:59 | - | - |
夜は終わらない
星野 智幸
講談社
¥ 1,998
(2014-05-23)

「DRESS」今月の一冊は『夜は終わらない』です。
以下、原稿より引用。

星野智幸の『夜は終わらない』は読みだしたら最後、なかなか現実に帰れなくなる危険な小説です。メインストーリーの語り手である玲緒奈は、男の望み通りの女を演じて財産を奪う詐欺師。金を引き出したあと不要になった男を殺す前に〈私が夢中になれるようなお話をしてよ〉と言い渡します。男の話が楽しめたら、次の夜までは殺しません。つまらなかったら〈この世から追放〉。
 なぜそんなことをするのか。玲緒奈は婚約者のひとり、シュンジューについて語ります。シュンジューは久しぶりに会えた玲緒奈に抱きつきますが、自分からセックスに持ち込むことができません。〈結局私が決めなきゃならないんだよな〉と玲緒奈は胸の内で冷たく笑います。しかもシュンジューは受け身のくせに自分語りが大好き。玲緒奈が苛立つのもわかるかも、と思ってしまいます。〈私が出逢う男たちは、自分でパンツも脱げない。だから私は、しかるべき代償を受け取って、その男たちをかれらの人生の主人公にしてやっている〉。男のファンタジーを容易に実現できるだけに飽き飽きもしている玲緒奈は、自分が主人公になれる物語を求めるのです。

あわせて『バートン版 千夜一夜物語』の1巻を読んだらものすごくおもしろかった。いずれ全巻通読してみたいです。
| お知らせ | 13:27 | - | - |
ライオット・パーティーへようこそ
「波」に『ライオットパーティーへようこそ』の書評を寄せています。新潮社のウェブサイトにも転載されていて、全文読めます。よかったら。

以下、原稿の冒頭から引用。

第七回新潮エンターテインメント大賞を受賞した水沢秋生のデビュー作『ゴールデンラッキービートルの伝説』には驚いた。三人の小学生が廃材置き場に自分たちだけの秘密基地をつくってかけがえのない友情を育むという設定は地味でありきたりなのに、実際に読んでみると鮮烈だったから。子供たちが捨てられた車の中で過ごしているときに〈7が三つ並んだスロットマシンからコインがあふれ出すような勢いで〉降り注ぐ太陽の光、みんなで一緒に何かをやり遂げるワクワク感がやがて切なさに変わる「黄金虫作戦」、ほとんど登場しないにもかかわらず物語の要になっている先生の言葉。記憶に刻み込まれた場面がいくつもあった。

水沢さんは記憶と時間を描ける人だと思います。
| お知らせ | 18:21 | - | - |
かつては岸
 『かつては岸』(ポール・ユーン著、藤井光訳)の書評を「週刊金曜日」7月18日号に寄せています。

本書は1980年生まれの韓国系アメリカ人作家によるデビュー短編集。収められた8編はいずれも、朝鮮半島の南にある架空の島、ソラを舞台にしている。ベテラン海女と事故で片腕をなくした日本人少年が友情を育む「彼らに聞かれないように」、震災で家族を失い島の孤児院に送られた日本人女性が野戦病院で働くうちに忘れられない幼なじみの面影を発見するO・ヘンリー賞受賞作「そしてわたしたちはここに」など、どの話も過去と現在を往来しながら、島の風景、人々の出会いと別れを精緻に描いていて、新人離れしている。

以上原稿より引用。
表題作の『かつては岸』で、ウェイターのジムが兄と「海の中心」を探す冒険に出たときの話がすごく好きです。

原稿には盛り込めなかったけど、「そしてわたしたちはここに」の主人公がいる病院に石庭があって、そこにビー玉を埋めるシーンも忘れがたい。

しみじみとうつくしい小説。

| お知らせ | 17:21 | - | - |
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