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『書物愛』といえば。
最初に収録されているフローベールの『愛書狂』で、厖大な貴重書、珍籍、美本のかずかずを収めた書庫を持てたらなあと妄想する男の語りが可笑しかった。

上を見ても、書物! 下を見ても、書物! さらに右も、左も、書物!

訳は生田耕作。
| おもしろかった本 | 16:14 | - | - |
山田航『さよならバグ・チルドレン』(ふらんす堂)
ぱらぱらとめくっていて目に止まったのは

たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充していく

という一首。わたしは山田さんよりも10歳上だけど、たまにそういうことを考える。コンビニで飲み物をとろうとしたとき、裏側からペットボトルを補充する手が見えたときのことを思い出す。

〈走らうとすれば地球が回りだしスタートラインが逃げてゆく〉のに〈歩き出さなくてはならぬかなしみ〉を抱えている僕たちが、抒情で現実を飛び越す。デバッグルームやIDカード、放置自転車、作業着などが詩的風景と結びつく。

特に好きだったのは

脱ぎ捨てればひとでのやうに広がれるシャツが酸つぱい匂ひを放つ

粉雪のひとつひとつが魚へと変わる濡れたる睫毛のうへで

鍵穴は休符のかたちこのドアを開くにふさはしき無音あれ
| おもしろかった本 | 15:54 | - | - |
書評からこぼれてしまう情景
ジョナサン フランゼン,Franzen Jonathan
早川書房
¥ 4,200
(2012-12-19)

雑誌や新聞に掲載される書評には文字数制限がある。
『フリーダム』のような大長編になると、書けることはものすごく少ない。

親よりも善く、自由に生きようとする夫婦の「過ち」を通して、アメリカという国の「過ち」も見えてくる。大きな構図があるんだけど、細部がいちいち楽しいので、読んでいる最中はむつかしいことは考えない。とっても面白い小説。

原稿を書くために読み返していたら、夫のウォルターの少年時代を描いたパートで、好きな情景があったので残しておきたい。

ウォルターの父は暴力はふるわないもののアル中で、つぶれそうなモーテルを経営していた。気取った人間やインテリを憎み、本好きのウォルターにわざと汚れ仕事をさせる。そんな父が唯一家庭的な面を見せた、クリスマスのキャンディ作り。母と一緒にたくさんのキャンディを作って、友人や親類に配る。そのキャンディを乗せた車中の場面。

移動中、ウォルターは本を手に後部座席に座り、窓の形をした弱々しい陽光の一片を見つめていた。シートの上でじっとしていた光が、ついに横道に折れるときが来ると足元の谷をするする横切り、ねじれた形で前のシートの背に再び現れる。外の景色は果てしなく同じで、まばらな森林地、雪に覆われた沼地、電柱に留められた丸いブリキの肥料の広告、翼を畳んだタカに物怖じせぬカラス。シートの隣では、すでに立ち寄った家からの贈り物の山が堆くなっていき(中略)逆にバーグランド家の缶の山はじわじわ減っていく。これらの缶の何よりの価値は、そこにジーンとドロシーが結婚以来ずっと配ってきた変わらぬキャンディが入っている点にあった。キャンディは年を経るにつれ、ご馳走そのものから、過ぎし日のご馳走の形見へとしだいに姿を変えてきたのだった。年に一度の贈り物、そこでは貧しいバーグランド家がいまなお豊かでいられたのだ。

人種も年齢も性別も主義主張も共通するところがまるでないけど、自分とウォルターの距離がなくなった気がした。湖畔の別荘の思い出も切ない。

| おもしろかった本 | 05:52 | - | - |
『フリーダム』「過ちは起こった」第三章まで。
ジョナサン フランゼン,Franzen Jonathan
早川書房
¥ 4,200
(2012-12-19)

セントポールの荒廃した旧都心、ラムジーヒルのバリア街に、大卒で初めて家を買ったバーグランド夫妻。夫のウォルターは大手企業のスリーエムに勤め、妻のパティは専業主婦。

〈よくいる罪悪感過剰なリベラル、おのれの恵まれた境遇がうしろめたいばかりに他人にも寛大にならずにはおれず、その特権的地位にふさわしい勇気を持てない、そういう類のリベラルなのだった〉と近所の人に言われるような2人が、愛する息子を隣人に奪われ、街を出て行くまでが導入部。

続く「過ちは起こった」は、パティがセラピストの勧めにより書いた自伝。

パティは政治家の娘で体育会系。タイトルと真逆の窮屈な青春時代を経て、いい母親になろうとしたのに、過ちばかり犯すことになってしまう。いつも他人に気を使い、真面目な人なんだけど、突然「はあ?」と思うような行動をとる。『コレクションズ』もそうだけど、フランゼンは一見凡庸な人間のいびつなところを描かせたらすごいのだった。で、駄目だなあパティと思いながら、自分の犯した過ちの数々が脳裏をよぎり、ぎゃーっとなる。痛おもしろい。

ウォルターも良い夫なのにやっぱり何かおかしいし、その親友でカダフィ似(!)のミュージシャン、リチャードも一筋縄ではいかない。

『フリーダム』はたぶん〈自分を蝕んでいるのはわかっているのに、どうしても手放せない、そんな自由〉(P252)。

まだ読み終わってないけど、長い小説だし、しばらく雑事に追われて続きを読めそうもないので、忘れないようにメモ。
| おもしろかった本 | 07:09 | - | - |
マーセル・セロー『極北』
マーセル・セロー
中央公論新社
¥ 1,995
(2012-04-07)

冒頭の30ページくらいで「えっ?」となって、続けて「ええっ」「えええーっ」と驚きの波紋が頭のなかにわーっと広がっていく感じ。

北極圏にある移民の街にひとり残された「私」(メイクピース)は、ある日飛行機の墜落を目撃。自分以外の誰かがいる場所を探すため旅立つ。「私」の彷徨の先に何が待っているのか、全くわからない状態で読んだほうが楽しめる小説です。
| おもしろかった本 | 06:13 | - | - |
プレゼントにいいかも『こんにちは美術』
わたしの父は図画工作が得意で、子供のころ、絵の構図をとるための道具を作ってくれたことがあります。古いハガキの真ん中を四角くくりぬいて十字に糸を貼り、フレームとして使う。四角い穴で切り取られた風景は、いつもと違うように見えました。

『こんにちは美術』は児童向けの現代美術入門書ですが、ユニークな方法でつくられています。同じ作品の写真を、撮り方を変えて三枚並べて見せているのです。

例えば、会田誠の「あぜ道」。あぜ道とそこを歩く女の子の髪の分け目がつながって見えるように描いた絵画です。その全体を写した一枚と、左右を切り落として写した一枚、上下を切り落として写した一枚で構成されていますが、ほんの少しトリミングを変えただけなのに、ぜんぜん違う絵になる。全体を写しているときはひとりで歩いているように見える女の子が、別の一枚では誰かにつけられているように見えるのです。不思議! しかもただ並べてあるだけじゃなくて、しかけ絵本のように楽しめます。

自分の眼とは異なるフレームで世界を見せてくれるのが、美術のおもしろいところ。大人が読んでも発見が多い本です。
| おもしろかった本 | 18:21 | - | - |
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